マッサージでバク睡
(3月8日夕方)
陳さんの家は無錫駅から、バスで30分。
郭さんについて行くと、やがて5階建てのマンションにつく。
この一角は、守衛がいるから安全だと言う。
マンションの入り口で鍵をあけ、3階まであがる。
チャイムを鳴らすと、陳さんが出てきた。
「お〜、久しぶり。元気やったかい
今日は仕事を早くきりあげて帰ってきたよ」
中国の労働者の平均月給は1500〜3000元。
ここは会社(日系企業)が借りている社宅。家賃は2000元。
100uはあるだろうか。二人で生活するには贅沢なほど広い。
「すっかり、セレブやなー」
おもわず、驚嘆の声がもれる。
「うちに泊まったらいいのに。遠慮することないのに。
先生は家族と一緒やと思ってるんだから」
「わかってる。だけど、ホテルにも泊まってみたいんや」
私はメールで中国の人が利用する宿屋を希望していた。
中国の人たちに、できるだけ近づいてみたかった。
「ここから5分ぐらいのところや。じゃあー案内してから食事に行くか」
宿は一泊90元(1350円)。
受付カウンターの姉御にパスポートを出すと
「いらない」と言う。保証金は200元。
(おかしいな〜。外国人が泊まる報告義務があるはずなのに)
後で領収書を見ると、国籍.パスポート番号.飛行機便なども
ちゃんと書かれてありました。事前に陳さんが書いていたようです。
バスタブはむろんある、寝るだけだからじゅうぶんだ。
【興業大酒店】 xing ye hotel
無錫市 五愛路 康馨苑302-21
*テレビは中国のものばかり。ネット接続はむろんない。
ちなみに、冷蔵庫もなくポットだけ。
夕食は“武漢鍋”に決定。四川料理らしい。
羊の肉がメインで、たくさんの野菜、
餅やアヒルの血の固まりなどが出てくる。
どれも、うまい。食べても食べても、陳さんは
私のおわんについでくる。
「もう、いっぱいや。僕のほうはいいから食べて、食べて」
「豚の脳みそ、食べるか」
にやりと笑って陳さんが言う。
「え〜、もう腹いっぱいやで」
ほんとうに腹いっぱいだった。が、正直あまり食べたいとは思わなかった。
食後、郭さんを帰して私たちはマッサージへ行く。
「先生のリクエストの“盲人あんま”は見つからなかった」
そこは、込んでいた。30分ほど待たされる。
2時間で50元(750円)である。
1時間は足ツボマッサージ。後の
1時間は全身をもんでくれる。
陳さんのほうは20歳、私のほうは25歳の女性だった。
彼女らは少数民族の出身。状族と土族だ。
兄弟はそれぞれ、4人と2人いる。
「一人っ子政策じゃないの中国って」
「少数民族は関係ないのさ。たとえ罰金があったとしても
少額ですむはずだからね」
前に聞いたときと同じように、3割は自分取りで
食事と住居はオーナーがもつ。
私はここで以前から不思議に思っている事を聞いた。
「2時間で50元とは安いですね。店によっては120元とか
150元ってあるけど、どうしてそこで働かないの」
彼女らは笑いながら、答える。
「あーいう店は意外にお客さんが少ないんです。うちはお客さんも多いし
結局はうちのほうが稼ぎはいいんじゃないんかな」
「へえ〜、そうなんや」
稼いだお金のほとんどは、田舎に送るんだと胸を張って言う彼女らは
日本の若者とは明らかに違う。
足ツボマッサージが終わるとベットを倒して
全身をもんでくれる。最初は腹臥位である。
少しものたりない。やがて、背臥位になってもみだし
膝蓋骨に薬草のようなものをのせた。
心地よい暖かさに陳さんはイビキをかきはじめた。
私は熱さが我慢できなくなり、表面の布を取って大声でよんだ。
なかなか彼女らは来ない。ようやくのこと気づいてくれ、それを取って
毛布をかぶせて出て行く。
陳さんは相変わらずイビキをかいている。
私もいつのまにか熟睡していた。
朝の4時半におきて無錫まで来たのだ、眠いはずだ。
気がついて時計を見ると夜中の2時を過ぎていた。
「おいおい、帰ろうぜ」
私が陳さんの背中をつっつくと、彼は
「う〜ん」
と言って手ではらう。
(疲れてるんや。頼む寝かせてくれ)
奥さんが迫ってきたと、勘違いしている。
「ハハハ、郭さんとちゃうで、おきておきて」
「えー、あ、先生どうしたの」
完全に眠っていた陳さんを連れて帰った私は
風呂にも入らず、寝てしまった。
安いとはいえ、ほんまに寝るだけのもったいない宿泊であった。
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