洋二の住むマンションの横は○○川が流れている。
北の国道と南の産業道路を結ぶ支線が、
その川との間にあり、往来する車は比較的少ない。
引っ越して来たときは、川面から湧き出したメタンガスの臭気が
時々漂ってきて気になったが、それもすぐに慣れてきた。
水質もかなり改善されてもいる。
海まではかなりの距離があると思われたが、
この川は いつ見ても下流から上流へ水が流れている。
川の向こうは兵庫県。
ゆっくり歩いても、5〜6分の距離。
橋を渡ったところに、健康ランドがあった。
駐車場が広くとられていて、ゆったりとしたスペースで
1階部分に多種の風呂が備えられている。
2階は宴会場やゲームコーナー、映画館そしてマッサージルーム。
かねてから洋二はここでアルバイトをしたいと思っていたが、
どうやって話しを切り出したらいいのかがわからない。
子供たちが遊んでいるのを横目で見ながら
ソファーに腰掛け、一服しながら周りを見る。
男女別々の部屋でマッサージがやられていることが、わかる。
出入り口付近では、水色の制服を着た
トレーナーらしき女性が
「ありがとうございました」
と、見送っている。
トレーナーは若い人もいるが、けっこう年配の人もいる。
ひっきりなしに客は出入りしているようだ。
受付カウンターでは、違う征服を来た女性が応対している。
(マッサージの受付はあそこか。あの女性に話したらいいのかな〜)
そんなことを考えていたが、話しかける勇気はない。
「おはようー」
カウンターの女性はあわてた様子で
「オーナー、おはようございます」
と丁寧に頭を下げる。
紙袋を持った長い髪のやせた女はカウンターの横に 姿を消した。
(え〜、すると今のが経営者か。お昼時に出勤??)
突然、カウンターの女性が洋二の前へあゆみよってきた。
「××様、××様、お待たせしました」
「おー」
洋二の横でタバコをふかしていた大柄男が、横柄に答える。
彼は男性ルームの前で待つ若いトレーナーに親しげに声をかけて 入っていった。
(ふ〜ん。常連さんか)
向かいに座っている人たちも、予約をしている人たちなんだろうかと
思うと、居心地が悪くなり洋二はその場を離れた。
「マッサージのアルバイトは、募集していますか」
ロッカーキーを出して清算中のわずかの間に
洋二は思い切ってカウンターの彼女に尋ねた。
「え、あ、アルバイトですか。ええ、随時募集していると思いますが」
「どこに申し込めばいいのですか」
「ちょっと、お待ちください」
一気にそこまで尋ねた洋二の心臓は、破裂しそうになる。
彼女は奥から名刺を1枚持って来た。
「ここへ電話をしてください。あとのことは
私にはわかりませんので…」
「そうですか。ありがとうございました」
洋二はまだ高ぶっている鼓動と、胸の内ポケットに入れた名刺を
意識しながら、外へでた。
何度も内ポケットをなでながら、橋を渡った。
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