自転車は、
 凶器?





 (ふ〜、やれやれ)
洋二はマッサージが終わり、トイレで用をたしていた。
向こうでドアチャイムの音と同時に、大声がした。
 (ハイハイちょっと、待ってや。今いきまっさ)
手を洗うのもそこそこに、玄関へ向かった。

 「先生、今…そこで…」
つい先ほど、マッサージが終わって帰ったお客さんだった。
 「外で上着を着ようとしたら、自転車にひっかけられて、右手が…」
そう言いながら右手を洋二の目の前に差し出した。
血がにじんでいた

 「倒れたひょうしに、右手をいやというほどうったんです。
どうか、なってませんか」
顔は、苦痛と恐怖でゆがんでいた。

 洋二は、血のにじむ甲を指ではじいた。
 「イテテテ、痛い、痛いです」

 (先ほどうったのだから痛いのは当たり前やんか。
しびれているだろうな。まー、時間がたったら
治るだろうけど。しかし、マッサージが終わってゆっくりと
着がえてから帰ってくださいと、あれほど言ったのに)
洋二は、今さら言っても仕方ないとのみこんだ。

そうは思いながらも、そのお客さんとの会話を思い出していた。
 (確か、○○整形外科へかよっていたなー)
 「整形外科の診察券は持ってますか?」
洋二は拡大読書器で確認し、診察券にある
電話番号を押した。

 「すみません。今、うちのお客さんが転倒して……。
お昼どきで申しわけないのですが、診てもらえませんか」
洋二は、彼女に整形外科へ行くように言った。

 ドアの向こうでは、ぶつけた当人が心配そうに
立っている。70は過ぎているおばあさんである。
彼女も整形外科へ、ついて行ったようだった。

 昼飯を食べ終わったころ、お客さんがまたやってきた。
 「骨にはヒビもはいってないみたい。大丈夫みたいです」
その顔は、先ほどとは別人の顔だった。

彼女が帰ってから、入れ替わりに入ってきたのは、
加害者のおばあさんだった。
 「すみません。あやまったんですけど、もう大丈夫だから
気にしないでと言われたんです。でも、せめてお見舞いぐらいは
したいので、あの人の住所を教えてもらえませんか」
おばあさんは言った。

 「え、彼女に聞かなかったんですか?」
洋二は困ってしまったが、気持ちはわからないでもなかった。
 「あ、そうですか。本来なら教えることはできないのですけど…」
そう、言いながら、彼女の住所を教えた。
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 身勝手な自転車の走行が問題になってきたのは、
今にはじまったことではありません。
昔ながらの狭い商店街でも、疾走する自転車を
歩行者は注意をしながら歩いています。

チリンチリンと、けたたましくならされ
 「コラー、どこ見て歩いてるんや」
 (おいおい、そりゃー違うやろ)
よく見る光景です。
商店街の中ではせめて下りて、引っ張ってほしいものです。

 閑散とした商店街ですが、開業している店舗では
ワゴンをいくつも店先にならべ、大きな看板を出しています。
人々が通りにくくなっているうえに、
さらに自転車が多いことが
問題を深刻化させています。

 大量に買い込んだ食料品や雑貨を、家まで
もって帰るのは、これまた大変です。
当然、自転車をもってきて、前や後ろに積み込むと
楽なのです。

いちがいに、“自己中心主義”と言ってのけるのは
問題ですが、明らかに“自己中心主義”の自転車には
何らかの罰を与えてほしいものです。

信号を無視する・ジグザグに走行する。
歩道をスピードあげて走りぬける。
夜に無灯火で走る。
所かまわず放置(駐輪)する。
携帯をかけながら、疾走する。
などは、ほんの一例です。

 自転車は、資源エネルギーを浪費しない「すぐれもの」ですが、
容易に凶器に変身します。自転車が被害者側となる場合もありますが、
加害者側となるケースも激増しています。
「たかが自転車、されど自転車」と言わざるを得ません。

 自動車を運転する側の話しを聞いてみますと、
自転車は極めて厄介な存在だそうです。
人は動作がさほど速くなく、危険度は小さいのです。

ところが、自転車には信号無視・斜め走行・
急発進等の想定外の走行が頻発し、スピードがあるだけに、
非常に怖い(事故に結びつき易い)存在だそうです。

自転車の灯火は、都会の場合は自分のためというより、
自動車(特に対向車)からの安全確保の意義の方が
大きいのです。また、歩行者にも走行を知らしめる、唯一の手段なのです。

 自転車通行に関する規範・モラル・罰則の確立が
緊急の課題となってきました。
困った現代公害です。      (07年7月16日)



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