洋二と陳は市内を歩きまわり疲れたので、
またマッサージへ行くことにした。
前日とは違うマッサージ店にしようと相談がまとまった。
「せっかくだから中国の銭湯とやらに入りたいな、どうだろう」
陳は洋二を振り返りながら言う。
「若いときに銭湯に入ったことはあるが、なんせ汚いよ。あかが浮いてて
中国人の私でも行きたくないのに、行く?」
「え、そうなん。じゃあーやめとこか。それなら健康ランドみたいなのはどうだろう」
それならと、探すことにした。
「このあたりで、健康ランドはありませんか?」
行き交う人に、聞いてみる。
「そんなの知らないよ」
本当に知らないのか、まったく興味がないのか、相手にしてくれない。
それでも、ようやく見つけることができた。
行ってみると、そこは派手な電飾がついている。
入り口から建物の壁一面までイルミネーションで飾られている。
「おいおい、こりゃ違うんじゃないの。」
「いや、間違いないはずだ」
まるで安物のラブホテルである。何もここまで派手にしなくとも…。
恐る恐る入ってみる。入り口の女性に聞いてみる。
「入場料は42元(630円)です。
あ、マッサージね、もちろんありますよ」
安心して二人は入った。
ロッカールームに入ると、若い男性の係員がいる。
裸になり準備が終わると、係員は鍵をかけてくれる。
(大丈夫かな?)
一瞬、不安がよぎるが、すぐに打ち消した。
ミルク風呂.酒風呂.普通の風呂の三つがある。
サウナは足元に炭火みたいなものがあり
それに水をかけると熱くなるしくみ。
一昔前の日本の銭湯を思い出す。
身体を洗うところに、椅子は無い。立ったまま洗う。
その横にベットがあり、私たちが身体を洗っていると
男性が入ってきた。
彼は横になり、股間にタオルをかけた。
その後、女性が入ってきてあかすりをはじめる。
個室はないのか。サービスは日本とはまた異なる。
鏡に映る彼らはひたすら黙っていた。
リラックスという言葉はなさそうに思えた。
温もってから出ると、奥から先ほどのロッカー係の
男性が出てきて背中をバスタオルで拭いてくれる。こそばゆい。
そこまでしてくれなくても、いいのに…。
館内着に着替え、休憩室へと行く。
一人がけの大きめのソファーに横たわりお茶をもらう。
そうだ、中国映画にこんなところで話してるシーンがあったなと
おもわず思い出した。
正面の特大テレビでは、ドキュメンタリーをやっていた。
一服してマッサージルームへ向かう。
個室へ案内された。
腰と肩を重点的にもんでと、洋二は言った。
洋二の娘ぐらいの彼女は、足をもみだした。
「クーラーつけますか」
「もちろん、つけて。暑いからね」
(客が入ってからつけるか、…)
しばらくすると、股間に手が触れた。
「いやいや〜そこじゃない」
中国語が通じなかったのかと思い、もう一度はっきり言った。
「電気は消しますか?」
(ん、こいつ何を言うんだ)
洋二はここで気がつくべきであった。
「いや、このままでいいよ」
しかし、やはり雰囲気は違っていた。
また、股間に手が触れた。
次の瞬間、重みを感じた。覆いかぶさってきたのである。
目の前には彼女の顔があった。
情けないことにここまできて、ようやくわかったのである。
洋二は彼女を跳ね除け、隣の陳の部屋のドアを開けた。
そこは、真っ暗だった。
「陳さん、帰ろう。変なマッサージだ。」
奥から、若い男が三人出てきた。
(やばー、まいったなー)
幸いなことに陳の説明で、その場を離れることができた。
そそくさと支度をして健康ランドを後にした。
「陳さん、すまんかった。邪魔したな」
「いや、私も出ようと思ってたとこでした」
「ほんまでっか。真っ暗やったやないですか」
明らかに、陳は苦笑いをしている。
その顔は残念そうに洋二には見えた。
帰り道、前日に行ったマッサージ店でまたもや
2時間もんでもらい、二人は帰った。
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