北京の胡同(フートン)
「胡同」は北京特有の路地です。
北京には胡同が4550余本もあるそうです。
しかし、08年のオリンピックや近代化の波に押され、
取り壊されつつあります。
開発業者の強制立ち退きは庶民をフートンから
追い出しているニュースが、日本でもよく報道されています。
もったいないことです。
紫禁城の周りにつくられ、恭王府を中心とする一部の胡同が、
割に完全な形で保存されています。
中国映画や小説などで知っていましたが、今では取り壊されて
見る影もないと思っていました。
そこへ行けることがわかり、私は小躍りしました。
胡同には「四合院」とよばれる建物が、ぎっしり並んでいます。
「四合院」をぬうように大小さまざまな通路が胡同です。
元、明、清、の三王朝にできたもので、私たちは輪タクに乗って、
700年以上の歴史をもつ胡同を回りました。
輪タクの若い兄ちゃんは、運転が実にうまい。
(あ、危ない。ぶつかるー)
車や出っ張った物にぶつかりそうになります。
若い兄ちゃんは後ろを見ることもなく、私がヒヤッとするのを
見透かすかのように障害物を避け疾走します。
狭い胡同には、秩序などまったくないよう。
車は何台も駐車され、自転車に乗ったおばはんはヨタヨタ通るし、
物売りの馬車もおかまいなしに通る。
小さな商店は林立、外のテーブルでビールを飲む人も。
考えてみたら余計なこと。これが胡同の生活そのもの。
外国人が余計なことを考えることこそ、おせっかいなこと。
「四合院」の静かな情調と一般庶民の
風土.人情を体験することができました。
具体的には「四合院」の中に入ることができたのです。
魯迅の小説の「阿Q」が出てきそうなところです。
胡同は人が行き交い騒然としていましたが
1歩「四合院」に入ると別世界です。
静かで外とは遮断された空間です。
私たちが入った「四合院」には、老夫婦と二組の若夫婦ら
7人が住んでいます。広さは60坪ありました。
冬にはかなり冷えるのでしょう。最近ではあまり見ない
煉炭が壁一面に、かなりの数積まれていました。
「あなたたちは目が悪いのだから、米子
中国の人の生活を触ってみて感じてください」
そう言って、李さんが皆をつれて回ります。
冷蔵庫の中.レンジからガス器具までも…。
さすがに私は申しわけなくて
眺めるだけにしていました。
歴史的に価値のあるこの一帯を中国政府は
残すことにしたようです。
「このフートン巡りはいくらするの」
私は輪タクの中で李さんに聞きました。
(えー、言いにくいことを聞くな)
彼はそんな顔をして、それでも
「3千円ぐらいかな」
と教えてくれました。けっこうな値段です。
帰りのバスの中でフートンについて、聞くことができました。
「フートンは一部残すらしいけど、立ち退きになった人々はどうしているの」
「政府が一応立退き料を出します。でも、都心に住める金額ではないから
郊外へ引っ越さざるをえません。中国は土地は国のものですから
逆らうことはできないのです」
私は今見てきた興奮が、さっと冷めてきました。
私は初めて北京へ来たとき、フートンを
歩いて回ったことがあります。
そのころは、輪タクはありませんでした。
10数年も前のことですから。
オリンピック経気で林立するビル群、フートンに住める人々。
地下道に座り込んで物乞いする乞食。
いつも、中国の光と影は気を重くします。
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