初日、ツアーの予定に組み込まれている行程を
洋二は皆についてまわっった。
陳は父親と会うため別行動。本来ならツアーに組み込まれている
予定コースを外れることはできないはずだが
陳は中国人ガイドに頼み込んで実現した。
中国茶専門店、シルク工場、買い物市場へ行く。
中国ツアーの決まったこれらのコースにはへきえきさせられる。
昼食は羊毛物産店のモンゴリアン料理。
ツアー客には目が悪いことは言ってなかったので、
洋二はみながやるのをまねて皿に食材をとった。
豚肉なのか鶏肉なのか、はたして羊肉なのか。
見たことも無い中国の野菜もある。
何種類も食材を取りわけた皿を、コックにわたした。
コックは中華鍋で炒めて味付けをして返した。
(え〜炒めて味付けるだけなら
たいそうなことをしなくてもいいのに…)
モンゴリアン料理を楽しみにしていただけに
洋二はがっかりした。
途中、2時間ほど自由時間があった。
幼時はみやげ物を買うことにした。
上海新天地はかなりモダンだと説明されたが
ピンとこない。
アクセサリーを売る出店があった。
娘と同じぐらいの子を見つけて交渉する。
「あんたと一緒ぐらいの娘に買おうと思ってね。これいくらするの」
洋二は見えなかったが、それでもかわいいと思われる
ネックレスを指差した。
「65元(975円)です」
すばやく計算、安いと思いながらも交渉開始。
「高いな。もっと安くならないか」
彼女は笑い、明らかに困っている。
言い訳をする言葉に
「私は雇われていますので、そんなことはできません」
の意味が聞き取れた。それでも洋二は
「あれとこれも買うから、どうにかしてや」
それでも彼女はまけようとはしない。
「じゃあーいいや」
行こうとしたら彼女はあわててとめた。
(よし、計算どおりや)
「こっちなら安くなります」
どっちでもよかったが、洋二は首をふった。
「ないしょですよ。しかたありません。
どうぞお持ち帰りください」
彼女はおれた。3個150元になった。
はじめからそうしてくれたらいいんだ。
洋二は満足しながらも、自分に驚くのだった。
「何買ったの。いくらしたの」
同じツアー客の夫婦連れが寄ってきた。
ずっと見ていたようだ。
「2925円を2250円で、ネックレスを3本買いました。
700円まけさすのに苦労しました。
日本ではこんなことようしませんが、ここではできますね。
大阪のオバハンの気持ちがわかりますわ」
洋二は袋を見せて自慢。
壁やドアに飾る中国製の小物を物色していると
売り子の姉御がすばやく近づいてくる。
「いらっしゃいませ。お気に入りのものはありますか」
流暢な日本語である。
1個15元のものを30個買おうと思っていた。
「これ一つずつ袋に包装してくれます。それから安くなる?」
「いくらぐらいなら、いいですか」
「え〜とみんなで。200元ではどう」
「いいですよ。いま準備しますね」
(なんや。そんなにまけてくれるんか。どうなっとんや)
儲けたのか損したのか複雑な気持ちで、店員の作業を
洋二は見つめた。
夕食会場には陳親子が、すでに来ていた。
「おひさしぶりです。元気でしたか」
洋二は陳の父親に挨拶した。
昨年、父親は尼崎へ遊びに来た。
だから顔見知りだった。
ツアーの一行と別れて、洋二と陳親子は豫園から外灘へ行った。
幻想的でエキゾチックな夜の中国がそこにあった。
豫園も外灘も夜の11時だというのに
人手あふれている。
世界一の人口であることがうなずける。
夜だというのに凧揚げをしている人や、アベック.親子連れなど、
老若男女を問わない彼らは、いつ寝るのだろう。
すごい、こんなに人がいるなんて。
洋二は驚愕するばかりであった。
明るく照らされたそこは、日本には無い空間だ。
外灘から少し歩いたところにある遊覧船に乗る。
夜景を見るのは高いところにかぎるが
船の上から見るのもおつなもの。
陳パパの提案だった。
乗船料は65元(約1000円)と少し高い。
面白いことに昼間の乗船料のほうが高い。
なぜだろう?。夜のほうが雰囲気もあり夜景もきれいなのに。
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