上海で、マッサージを受ける



 ホテルの横の百色路沿いを散歩していると、
 「川村さん。マッサージがありますよ。どうします」
陳がめざとく見つけて言った。
 「もちろん入ろう。こりゃ、楽しみや」
さっそく、入ってみると、カウンターの女性はにこやかに迎えてくれた。
 陳は交渉を始める。2時間68元(約1020円)。
それを43元(約645円)までまけさせた。
 「ええんかいな。そんなんで」
洋二があきれて聞いた。
 「大丈夫。入ろうぜ」
1時間は足をもみ、残りの1時間はベットでもむとのこと。
 「300元(4500円)で10回来れる回数券があるって
マネージャーが言ってたけど、ツアー客と言ったら笑ってた」
 「え〜安いな。そりゃあ残念だな」


   気持ちがいいぞう<


  二人部屋に案内され、大きなゆったりとしたイスに腰掛けた。
足元に台が置いてあったので、靴下を脱いで洋二は待った。
二人のイスの間には小さなテーブルがあり、大きめのコップに
中国茶を持ってきてくれる。まずは一服とタバコに火をつける。
 洋二は男性、陳は女性だった。漢方薬の入った容器に足をひたし
お湯は、熱いぐらいである。その間も、後ろにまわって肩や背中をもんでくれた。

 「日本には中国人は多いですか」
女性のほうが洋二にたずねてきた。
 「……」
洋二が黙っていると、陳が小声で
 「せっかく中国語習ってるんやから、答えんと」
 「わかってるけど。多いって何人ぐらいを多い言うんかな。わからんな」
陳は、代わりに説明してくれる。
今度は洋二が質問した。
 「上海の人ですか」
 「いえ、○○省のほうから働きに来ています」
 「結婚はしてるの。子供はいるの」
いやな顔をしないかなと思いながら、なおも聞いた。
 「結婚はしてます。子供は田舎で親がみてくれてます。
だから仕送りしてるんです」
陳さんに助けてもらいながら、ようやく理解できた。
 「勤務時間は何時から、何時」
 「午前11時から深夜の2時までです」
なんと15時間労働。労基法違反なんて言葉は中国にはないのか。
 「給料はいくらぐらいもらうの」
日本では聞けないことも、旅先では不思議と平気で聞ける。
 「上手な人なら、月に3000元(45000円)、
そうでないものは1500元(22500円)ぐらいかな」
陳が一般の、上海の労働者は月1500元ぐらいだと、付け加えてくれた。
 「歩合の内容はどんなふうに、なってるの」
 「5割が自分取り、あとは経営者に払う。そのかわり食事も
部屋代も経営者持ちね」
 「フ〜ン、そうなんや」
洋二はためいきをついた。後悔した。
 「陳さん、さっき値切ったけどよかったんかな」
 「大丈夫、これでも中国では、高給取りの
ほうだから心配ないよ。」
笑いながら平然と言うが、洋二は気がひけた。


 「この先生、日本で鍼灸マッサージをやっているんだよ」
陳が話題をかえてくれた。すると彼らは
 「私を日本で雇ってくれませんか」
と言い出した。本気かどうかは定かでない。
 「日本では免許を持ってないと、働けないよ。それに子供はどうするの」
彼らは何かを言っていたが、それは理解できなかった。
 「ちなみに私の店では2時間治療すると8000円(533元)もらうんだよ」
 「え〜 そんなにもらうの。日本人は金持ちだね]
彼らは、驚嘆するばかりであった。
 「お客さんは外国人ばかりですか」
洋二は話しをもどして、聞いた。
 「いえ、中国の人のほうが多いですよ。週に1度とか2度とか来られます」
 「へえ〜月給のわりには来る人が、多いんだな」
 「だから上海でも高給サラリーマンが増えてるんですわ」
陳が教えてくれた。けっして一般人でないことは明らかであった。


   
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