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洋二の開業するマッサージ店は、ひなびた商店街にある。 商店街は大型ショッピングモールに客をとられ、シャッター通りへと変化している。 平日といわず休日も、商店街は閑散としている。 洋二の店の隣は中華料理店で、上海から来た夫婦がやっていた。 彼らはすでに帰化をしているが、洋二は日本名ではなく、中国名の陳さんで 付き合っていた。 「先生、一度中国へ遊びに行きましょう」 たまには上海に帰る陳夫婦だが、上海のこの数年の変貌は 中国人でも驚きであると言った。 ぜひ行こうと誘われていた。 洋二は北京や天津.香港へは行ったことがあったが 上海へは、まだ行ってなかった。 「この新聞に3泊4日29800円ってあるから、これにしようよ」 「ええな。自由行動も多いみたいやし、決めるか」 二人で話しは盛り上がった。 「ところで、お父さんのところへは泊まりに行かなくていいの」 「よんで一緒に行動すればいいから、心配ないよ」 幸いなことに、海外旅行格安ツアーを提供する旅行社には、洋二の店の客がいた。 さっそく彼女に電話をかけ、契約を済ませた。 台風襲来 出発は関空を午後5時半である。 《研修のため、4日間休みます。》とシャッターに貼り付けて、洋二は帰った。 朝寝をゆっくり楽しんでいたが、前日の天気予報で台風が近づいているのが、 気にはかかっていた。電話で目が覚めた。 「先生、おはようございます。台風ですが予定通り出発しますので、 関空までとりあえず行ってくださいね」 旅行社のTさんだった。 「わかりました。しかし、ほんまに飛ぶんですかね〜」 ラジオでは、台風は四国に上陸したと報じている。 「国内線は欠航があいついでますが国際線は何も出てません」 洋二は昼まで営業している陳に電話をかけ、待ち合わせ時間を確認する。 1時に杭瀬駅を出て、二人は阪神尼崎まで乗った。 関空行きのリムジンバスの乗車券を買い、乗り場へ向かった。 「どちらへ行かれるんですか」 乗り場の係員が尋ねた。 「関西空港です」 「この天候ですからバスは出ません。電車で行ってください」 「えー。でも向こうまで行っても橋は渡れるの」 「わかりません。天候の状況によりますけど」 乗車券を払い戻し、不安そうな陳を促して電車に乗った。 阪神電車西大阪線西九条駅から、環状線に乗り換え 関空行きに乗ることができた。 だが、これも関空の対岸の泉佐野までしか行かない。 泉佐野駅は、関空行きを待つ人手あふれていた。 駅の情報で、台風は西ノ宮に上陸したことがわかった。 同時に、関空行きのバスが動き出した。 二人は行列を1時間ももみくちゃにされながら、 ようやくバスに乗り込むことができた。 カウンターでチケットを発行してもらい中へと入る。 予定通り出発することを、Tさんと妻に電話.メールして一息ついた。 時差が1時間の上海は、かなり夜もふけている。 ホテルに着いたのは午後10時。 日本では午後11時だ。 部屋に入ってから、その辺を散歩しようやと陳が言い出した。 「そういや、腹へったな。なんか食べようか」 ホテルを出ると外は真っ暗である。街灯もあまり無い。 10分ほど歩くと、にぎやかなところへ出た。夜もふけてるのに、人は多い。 1件の食堂へ入った。陳が注文してくれる。 「あの娘、田舎もんや。しゃべりかたでわかるわ」 田舎ものとは、上海周辺から働きにきているものらしい。 野菜炒めらしきものと、カニと餅の炒め物がでてくる。 洋二はビールを飲み、それらをおいしく食べた。こんな時間に 油ものは食べないが、かなりの美味であった。 |