点字依存症



 私は患者さんが来るまでの少しの時間、
たいていは本を読んでいます。
次々と送られてくる、雑誌や情報誌、借りた小説などを
読んでいるのです。

 「覚えるの大変だったでしょう。偉いな〜
頭がいいんだね。触ってもわからんわね」
手放し感嘆の声をあげた後、慈悲の言葉の連発が待っています。

 「かわいそうに。苦労したんやね...」
 (ムムムムム...)

点字の本を読んでいると、勉強しているように
見えるようです。(実際はそうじゃないのに)

 盲学校時代、最初点字はまったく読めませんでした。
墨字で見て覚える習慣がついていたため
サインペンでノートに大きく書き覚えて勉強していました。
それが見えずらくなり、マジックペンに代えました。

このままでは国家試験に受かるのは難しい。
1年の夏休み、朝から晩まで点字を触りました。
テレビを見ていてもビールを片手に、妻と話しながらも

異常な執念でした。
そのおかげで、2学期からは点字のノート取りができるようになり
スクールバスの中で本を読む時間が
「至福の時」と思えてきたのです。
(ちょっと、かっこつけすぎかな)

「両刀使い」に。(誤解しないでよ)
墨字で書いてポイントを点字で覚える。
これで成績が飛躍的に伸びたのでした。

 私のように中途で盲学校へ入った人の仲には
年齢がいきすぎていたり、病気のため感覚が鈍っていて
点字が覚えられない人がいました。

 彼らはテープに取り、何度も何度も聞いていました。
その努力たるや、涙ぐましいものです。

 今、日本には視覚障害者が約30万人います。
点字が読める人は2万人弱だそうです。

視覚障害者=点字が読めると、思われていますが
むしろ読めない人の方が大部分なのです。

 音声による情報提供、パソコンでのネット情報などで
視覚障害者の情報源が改善されてきていることは
喜ばしいことです。

 インターネットの青空文庫やナイーブネットで
読書することもできます。

 私は熟読したい本は点字を探して読むことにしています。
達成感と記憶に残るような気がしますものね。

 「点字毎日にこんなこと書いてあったな」
 「あれは行間が狭いし読みずらいやろ」
視覚障害者どうしでも、こんな話しになります。
私には不可思議なことの一つです。

 3月19日号の点字毎日に
「公立点字図書館に指定管理制度」の記事が載っていました。
これは行政側管理から、民間.法人管理へと移行するものです。

全国には31の点字図書館があります。
3月現在23の施設が指定管理制度を導入しました。

またもや行政側は、財源再編成で縮小を図るため
公的責任を逃れようとしているようです。

民間やNPOに移ったことにより、財源不足がさけられず
点訳や音声訳がスムーズにいかなくなる。
果ては、点字図書館の廃止にならなければいいのですが。
思い過ごしであればいいのですが...。
その理由の中に
「最近点字を読む人が減ったので」
なんて言われたくないですね。

 決してスピードは速くありませんが、私にとっては
確実に読み書きのできる点字はなくてはならないものです。

気にしたことはありませんが、1日1度は点字を触らないと
いや読まないと、何となく気分がすぐれません。
今や点字依存症だと自負しています。
診断書を府に提出しようかな。
どうにか、してくれへんかな〜。



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